家族のためにミニバンやSUVを選び、荷物が積めることや燃費の良さを優先してきた。
しかし、子どもが成長して家族全員で出かける機会が減ってくると、「次は自分が本当に乗りたい車を選んでもいいのではないか」と考える人もいるのではないでしょうか。
そんな大人に、もう一度検討してほしいのが2シーターです。
2人しか乗れず、荷物もそれほど積めない。車高が低いため、乗り降りしやすいともいえません。それでも、運転すること自体を目的に出かけたくなる楽しさがあります。
筆者自身、以前マツダ・ロードスターVスペシャルとフィアット・バルケッタを所有していました。
バルケッタは新車で購入しましたが、雨の日には驚くほど雨漏りしました。現在なら販売店へすぐに相談するところですが、当時は「まあ、バルケッタだから」と、どこかで許していたような気がします。
もちろん、雨漏りする車を無条件におすすめするわけではありません。
それでも不便さを含めて記憶に残っているのは、2シーターが単なる移動手段ではなかったからでしょう。
この記事では、現行モデルから少し古い輸入車まで、大人が今から選びたい2シーターを紹介します。
2シーターは若者だけの車ではない
2シーターというと、独身の若者が乗るスポーツカーというイメージを持つかもしれません。
しかし実際には、子育てや送迎という制約が少なくなった50代、60代以降の方が所有しやすい車でもあります。
筆者が最近訪れた鍼灸院では、高齢の先生がごく自然に「ロードスターを買った」と話していました。
若さを演出するためではなく、自分が好きな車を選んだ結果がロードスターだったのでしょう。好きな車に乗ることに、年齢による制限はありません。
むしろ注意したいのは「いつか乗ろう」と先送りしているうちに、低い車への乗り降りや長時間の運転が身体的に負担になってしまうことです。
家計や家族に無理をさせる必要はありませんが、乗れる条件が整っているなら、今が一番若いことも事実です。
2シーターを買う方法は2つある
2シーターを所有する方法は、大きく分けて次の2つです。
セカンドカーとして所有する
家族用の車を残し、休日や一人で出かけるときだけ2シーターに乗る方法です。
実用性を別の車に任せられるため、コペンやS660、古い輸入オープンカーなど、趣味性の強い車も選びやすくなります。
一方で、駐車場代、自動車税、任意保険、車検、整備費用などは2台分必要です。車両価格が安くても、年間の固定費を含めて判断しなければなりません。
メインカーとして所有する
通勤、買い物、旅行なども2シーター1台でこなす方法です。
生活環境が合えば不可能ではありません。夫婦2人で行動することが多く、大量の荷物を運ぶ機会が少なければ、ロードスターRFやフェアレディZ、BMW Z4なども候補になります。
ただし、家族や友人を乗せる可能性、旅行時の荷物、ゴルフバッグ、雨天時の使い勝手まで想像しておきましょう。
紹介した2シーターの比較表
価格帯は中古車を含むおおよその目安です。年式、グレード、走行距離、車両状態によって大きく変わるため、購入時は個別に確認してください。維持費は、税金、燃料、保険、車検、消耗品、故障修理などを含めた相対的な目安です。
| 車種 | 新車・中古 | 価格帯の目安 | ボディタイプ | 維持費 | 荷室 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| マツダ・ロードスター | 新車・中古 | 新車約300万~400万円台、中古約80万~350万円 | 2ドアオープンカー | 普通 | 小さめ。小旅行は工夫が必要 | 初めて2シーターを選ぶ人、軽快な走りと維持のしやすさを両立したい人 |
| マツダ・ロードスターRF | 新車・中古 | 新車約380万~450万円台、中古約180万~400万円 | 電動ハードトップクーペカブリオレ | 普通~やや高め | 小さめ | オープンカーの楽しさとクーペらしい安心感を求める人 |
| ダイハツ・コペン | 新車・中古 | 新車約200万~260万円台、中古約50万~220万円 | 軽2ドアオープンカー | 低め | 非常に小さい | 税金や燃料代を抑えながら気軽にオープンカーを楽しみたい人 |
| ホンダS660 | 中古 | 約120万~350万円 | 軽2ドアミッドシップオープンカー | 低め~普通 | かなり小さい | セカンドカーとして趣味性の高い走りを楽しみたい人 |
| 日産フェアレディZ | 新車・中古 | 新車約550万~900万円台、中古約100万~800万円 | 2ドアクーペ | 高め | 小さめだが旅行に使いやすい | 大排気量エンジンの力強さや高速道路での余裕を求める人 |
| トヨタGRスープラ | 新車・中古 | 新車約500万~900万円台、中古約350万~800万円 | 2ドアクーペ | 高め | 小さめ | オープンカーより高速安定性や高性能を重視する人 |
| フィアット・バルケッタ | 中古 | 約50万~250万円 | 2ドアオープンカー | 高め | 小さめ | イタリア車のデザインや個性、不便さも含めて楽しめる人 |
| BMW Z3 | 中古 | 約80万~400万円 | 2ドアオープンカー | 高め | 小さめ | 古典的なロードスタースタイルと直列6気筒の滑らかさを楽しみたい人 |
| メルセデス・ベンツSLK | 中古 | 約50万~350万円 | 電動ハードトップオープンカー | 高め | 小さめ | クーペの安心感と電動ルーフの利便性を求める人 |
| MG F/MG TF | 中古 | 約80万~300万円 | 2ドアミッドシップオープンカー | 高め | 小さめ | 英国車らしい雰囲気とミッドシップの個性を味わいたい人 |
| アルファロメオ・スパイダー | 中古 | 約80万~500万円以上 | 2ドアオープンカー | 高め~非常に高め | 小さめ | デザイン、エンジン音、ブランドの世界観を重視する人 |
| アバルト124スパイダー | 中古 | 約250万~500万円 | 2ドアオープンカー | 普通~やや高め | 小さめ | ロードスターの扱いやすさとターボエンジンの刺激を求める人 |
| ポルシェ・ボクスター | 中古 | 約200万~1,000万円以上 | 2ドアミッドシップオープンカー | 高め~非常に高め | 前後に荷室があり比較的使いやすい | 運転の楽しさと日常で使える完成度を両立したい人 |
| ポルシェ・ケイマン | 中古 | 約250万~1,000万円以上 | 2ドアミッドシップクーペ | 高め~非常に高め | 前後に荷室があり比較的使いやすい | オープンカーより剛性感やクーペの走りを重視する人 |
現実的に選びやすい国産2シーター
マツダ・ロードスター
初めて2シーターを所有する人に、最も勧めやすい一台です。
軽量な車体を意のままに動かす楽しさがありながら、日本車としての維持のしやすさも備えています。絶対的な速さより、一般道でも車を操る感覚を味わえることが魅力です。
ソフトトップは屋根を開けたときの開放感と軽快さが魅力。ロードスターRFは電動開閉式のルーフを備え、見た目や防犯性、日常での安心感を重視する人に向いています。
ただし、荷室は広くありません。夫婦で旅行する場合は、スーツケースではなく小さなバッグに分けるなどの工夫が必要です。
現行ロードスターのグレード選びや注意点は、新型ロードスターSは買いか?価格と後悔ポイントで詳しく解説しています。

ダイハツ・コペン
維持費を抑えながらオープンカーを楽しみたい人には、コペンが有力候補です。
軽自動車なので税金や高速料金を抑えやすく、車体も小さいため、都市部や狭い道でも扱いやすいのが特徴です。電動ルーフを備え、気軽に屋根を開けられる点も魅力でしょう。
一方で、乗り心地や静粛性、高速道路での余裕は普通車のオープンカーと異なります。購入前には短時間の試乗だけでなく、可能なら荒れた路面や高速道路も確認したいところです。
ホンダS660
S660は、軽自動車という規格の中でミッドシップレイアウトを実現した、非常に趣味性の高い車です。
車体の中央付近にエンジンがあり、低い着座位置と小さなボディによって、速度を出さなくてもスポーツカーらしい感覚を楽しめます。
ただし、荷物を載せる場所はかなり限られます。日常の買い物まで1台で済ませたい人よりも、セカンドカーとして割り切れる人向けです。
生産終了後の中古車は状態や価格差が大きいため、改造内容や保管状況も確認しましょう。
日産フェアレディZ
軽快さを楽しむロードスターとは異なり、大排気量エンジンの力強さと長距離性能を楽しむ2シーターです。
高速道路を使った旅行や、余裕のある加速を求める人には魅力的です。一方で、車体サイズ、燃料代、タイヤ代、保険料などの負担は小型オープンカーより大きくなります。
購入できるかだけでなく、数年間気持ちよく維持できるかまで考えて選びたい車です。
現行モデルの価格や変更点については、新型フェアレディZは買いか?価格と後悔しない選び方も参考にしてください。

トヨタGRスープラ
GRスープラも、日常使用と高性能を両立した2シータースポーツです。
クーペボディのため、オープンカーに比べて天候や防犯面を気にせず使いやすい一方、乗り降りや視界、荷室の形状には慣れが必要です。
ロードスターのような軽快感を求める車ではなく、高速域の安定感や力強い走りを重視する人に向いています。
1990年代から2000年代を彩った輸入2シーター
現在50代前後の車好きにとって、1990年代から2000年代は、小型オープンカーを選びたい放題ともいえる時代でした。
ロードスターの成功を受け、欧州メーカーからも個性的なモデルが次々に登場しました。
フィアット・バルケッタ
バルケッタは、丸みを帯びたボディと独特な表情が魅力の小型オープンカーです。
後輪駆動ではなく前輪駆動でしたが、スペックだけでは説明できない楽しさがありました。ドアハンドルやボディラインまで含め、眺めているだけでも満足できるイタリア車です。
筆者が新車で所有した車両は、残念ながら雨漏りが激しい個体でした。しかし、その経験を含めても忘れられない一台です。
現在中古車として購入する場合は、幌の状態だけでなく、ウェザーストリップ、冷却系、電装系、内装部品、部品供給などを確認する必要があります。
車両価格が安いからといって、維持費まで安いとは限りません。
古いイタリア車を中古で所有する際の注意点は、フィアット500はやめとけと言われる理由と中古車選びでも解説しています。
BMW Z3
ロングノーズと短いリアデッキを持つZ3は、分かりやすく古典的なロードスタースタイルが魅力です。
4気筒から6気筒まで仕様があり、グレードによって性格が異なります。特に直列6気筒モデルは、BMWらしいエンジンの滑らかさを楽しみたい人に人気があります。
年式を考えれば、ゴム部品、冷却系、電装品、幌、足回りなどに相応の整備が必要です。購入価格だけで予算を使い切らず、初期整備費を確保しておきましょう。
メルセデス・ベンツSLK
初代SLKの大きな特徴は、電動格納式ハードトップです。
屋根を閉じればクーペに近い安心感があり、ボタン操作でオープンカーへ変わる仕組みは、当時かなり新鮮でした。
中古車ではルーフの油圧機構やシール、電装系の状態が重要です。機構が複雑な分、故障したときの修理費も考えて選ぶ必要があります。
MG F/MG TF
MG Fは、英国らしい小型オープンカーの雰囲気と、ミッドシップならではのレイアウトを持つモデルです。後にMG TFへ発展しました。
現在では流通台数が限られ、誰にでも勧められる車ではありません。冷却系をはじめ、車種固有の弱点を理解している専門店との付き合いが重要になります。
MGBと混同されることがありますが、MGBはさらに古い世代のクラシックカーです。MG Fが新車で販売されていた頃にも、MGBはすでに旧車として扱われる存在でした。
アルファロメオ・スパイダー
アルファロメオ・スパイダーは、世代によってデザインも性格も大きく異なります。
クラシックな後輪駆動モデルに加え、1990年代以降には前輪駆動ベースの個性的なスパイダーが登場しました。実用性や信頼性だけで選ぶ車ではなく、デザインやエンジン音、ブランドの世界観に惚れて選ぶ車です。
古いアルファロメオは、安く買えたとしても整備先が見つからなければ維持できません。購入前に車両だけでなく、面倒を見てもらえる店を探すことが重要です。
アバルト124スパイダー
アバルト124スパイダーは、マツダ・ロードスターと基本構造を共有しながら、イタリア車らしいデザインとターボエンジンによって異なる個性を与えられたモデルです。
ロードスターの扱いやすさを土台にしつつ、より力強い加速や刺激を求める人に向いています。
ただし、すでに中古車で探すモデルであり、ロードスターほど流通台数は多くありません。整備履歴、改造の有無、幌の状態をよく確認しましょう。
ポルシェ・ボクスター/ケイマン
ボクスターとケイマンは、運転の楽しさだけでなく、日常で使える完成度も高いミッドシップスポーツです。
前後に荷室があるモデルもあり、見た目から想像するより旅行に使いやすい場合があります。
一方で、中古車価格だけを見て購入すると、点検、消耗品、タイヤ、ブレーキなどの費用に驚く可能性があります。安く買えるポルシェではなく、ポルシェを維持できる予算があるかで判断しましょう。
2シーターをメインカーにできる人
次の条件に多く当てはまる人は、2シーター1台でも生活できる可能性があります。
- 普段は1人または夫婦2人で乗る
- 子どもの送迎がほとんどない
- 大量の荷物を運ぶ機会が少ない
- 家族が別の車を所有している
- 公共交通やカーシェアを併用できる
- ゴルフやキャンプなど大きな荷物を必要とする趣味が少ない
- 多少の不便を楽しめる
ロードスターだからメインカーにできないのではありません。自分の生活と車の用途が合っているかが重要です。
2シーターで後悔しやすい人
一方、次のような人は慎重に検討しましょう。
- 3人以上で移動する機会が定期的にある
- 仕事で荷物を載せる
- 大型犬やアウトドア用品を運ぶ
- 低い車への乗り降りが身体的に厳しい
- 雨漏りや異音を少しでも許容できない
- 古い輸入車を購入価格だけで選ぼうとしている
- 整備を頼める店が近くにない
- 家族の理解を得られていない
特に旧車や古い輸入車は、故障しない個体を探すというより、故障したときに直せる環境を用意することが大切です。
50代以降なら安全装備と身体との相性も確認したい
若い頃に乗っていた車を再び選ぶとしても、身体や交通環境は当時と同じではありません。
試乗では、走りの楽しさだけでなく、次の点も確認しましょう。
- 低い座席から無理なく立ち上がれるか
- 後方や斜め後ろを確認しやすいか
- 夜間にメーターや周囲が見やすいか
- クラッチ操作が負担にならないか
- 長時間座って腰や膝が痛くならないか
- 衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備が必要か
- 乗り降りするときにドアを十分開けられる駐車環境か
MTにこだわる必要もありません。
MTを操ることが楽しい人はMTを選べばよく、渋滞や身体への負担を減らして長く乗りたい人はATを選べばよいでしょう。どちらが本物のスポーツカーかという話ではなく、自分が乗り続けられることの方が重要です。
ロードスター以外の選択肢も含めて探したい方は、2026年に新車で買えるMT車一覧もあわせてご覧ください。
古い2シーターは車両価格より整備環境で選ぶ
バルケッタ、Z3、SLK、MG F、アルファロメオ・スパイダーなどは、中古車価格だけを見ると手が届きやすく感じることがあります。
しかし、本当に確認すべきなのは次の部分です。
- 幌やルーフ機構の状態
- 雨漏りと排水経路
- エアコン
- 冷却系
- ゴムホースやウェザーストリップ
- 電装品
- 足回り
- タイミングベルトやチェーン
- 部品の入手性
- 整備を依頼できる専門店
100万円で購入できても、その後すぐに数十万円の整備が必要になる可能性があります。
古い輸入2シーターでは、予算をすべて車両購入に使わず、初期整備と突然の故障に備えた資金を残しておきましょう。
2シーターに限定せず、手頃な価格で運転を楽しめる車を探すなら、安くて楽しい中古MT車の選び方も紹介しています。
迷ったら、まずロードスターを基準に考える
初めて2シーターを購入するなら、ロードスターを基準に比較すると選びやすくなります。
ロードスターより維持費を抑えたいならコペン、さらに趣味性を高めたいならS660。力強さが欲しければフェアレディZやGRスープラ。輸入車の雰囲気を求めるならZ4、ボクスター、アバルト124スパイダーなどが候補になります。
バルケッタやMG F、古いアルファロメオ・スパイダーを選ぶなら、ロードスターでは得られない個性と引き換えに、維持の手間も受け入れられるかを考えましょう。
2人乗りでは実用性が足りないと感じる場合は、小さいながら後席を備えるGR86も候補です。GR86とロードスターの価格・維持費・実用性の違いも比較しています。

不便なのに、なぜ2シーターに乗りたくなるのか
2シーターは合理的な車ではありません。
同じ予算で、もっと広く、燃費がよく、安全装備が充実した車を選べます。家族や荷物を運ぶなら、SUVやミニバンの方が圧倒的に便利です。
それでも2シーターに惹かれるのは、車を移動手段ではなく、自分で動かして楽しむものとして感じられるからではないでしょうか。
筆者が所有していたバルケッタは、新車でも雨漏りしました。ロードスターVスペシャルも、家族で便利に使うための車ではありませんでした。
しかし、便利だった車より、不便だった2台の方が鮮明に記憶に残っています。
家族のための車を選び続けてきた人が、次は自分のために車を選ぶ。そんなタイミングで2シーターを検討することは、決して遅くありません。
乗りたい車があるなら、「いつか」ではなく、無理なく乗れる条件が整った今から考えてみてもよいのではないでしょうか。
